アメリカ大統領選メールバトル : トランプvsヒラリー
今年(2016年)の7月にご紹介した「アメリカ大統領選 メールバトル」の第2弾をお届けします。
世界中が注目した2016年のアメリカ大統領選が終わりました。
アメリカでは、4年前(2012年)の大統領選が、いわゆる "デジタル選挙" の第一歩と考えられています。
今回も、両陣営ともに、実にパワフルにメールを使っていました。
●どのくらいの頻度で配信していたか?
最初に、配信の頻度をご紹介します。その頻度には、本当に驚かされました。1日に何通も届く日もめずらしくありませんでした。選挙期間を通じた配信頻度の平均は下記になります。
- ヒラリー陣営:1日に0.80通(週に6.00通)
- トランプ陣営:1日に0.43通(週に3.25通)
平均すると、ヒラリー陣営は、ほぼ毎日と言っても良いペースでメールを配信していました。
●4つのドメインを使うトランプ陣営
投票日の1ヶ月前から選挙日までの期間に、2億5千万以上の受信ボックスを調べたリターンパスの調査結果をご紹介します。
まず、送信者アドレスについてです。ヒラリー陣営のメールは、送信者アドレスは、一つのドメイン(info@hillaryclinton.com)のみで運用していました。
一方、トランプ陣営は、
- donaldtrump.com
- donaldjtrump.com
- trump2016.com
- gopteam.gop
の4つのドメインを使い分けてメールを運用していました。
●メルマガの登録者数が逆転?
今年(2016年)の7月の時点では、メルマガの登録者においては、ヒラリー陣営が圧勝していました。
トランプ陣営のメルマガの登録者の、およそ30倍くらいはあったでしょうか。
ところが、投票日前のひと月間で、トランプ陣営の登録者数が驚くほど伸びています。
ヒラリー陣営は、この選挙戦が始まる以前から、政治活動を通じてメルマガの登録者を集め続けてきました。つまり、時間をかけて、メールを配信するリストのデータベースを増やしてきたのです。
一方、トランプ陣営は、この選挙戦に立ち向かうにあたり、ゼロから配信リストをつくりあげたようです。
ところが、ゼロから立ち上げたにも拘わらず、トランプ陣営の配信リストのボリュームが上回りました。
おそらく、購入したリストを使って登録者を増やしたのではないかとリターンパス社は見ています。
●トランプ陣営が開封率を下げてしまった原因は?
今年(2016年)の7月の時点では、開封率においては、トランプ陣営に軍配が上がっていました。ヒラリー陣営が配信するメールの約1.5倍ほどの開封率を記録していたのです。 ところが、トランプ陣営のメールの購読者が極端に増えるに従い、開封率も急激に落ち込んでいきます。
10月の後半における開封率の比較は下記です。
- ヒラリー陣営:18%
- トランプ陣営:12%
トランプ陣営のメルマガの開封率が落ち込んだ原因は、やはり、購入したメールアドレスを利用したことによる配信リストの質の低下が考えられます。
●ヒラリー陣営の"迷惑メール申告率"は、ほぼゼロ
"迷惑メール申告率" は、受信者の許諾をきちんと取ったクリーンなリストに対して配信しているかどうかの目安になります。Gmailをはじめ、多くのメーラーが、受信者が迷惑に感じたメールに対し、簡単に意思表示できる機能を用意しています。下記のグラフをご覧ください。紫(ヒラリー陣営)はほとんど見当たらず、赤(トランプ陣営)のみが目立ちます。
つまり、ヒラリー陣営が配信したメールに対する迷惑メール申告は、ほぼ皆無と言ってよいことがわかります。ヒラリー陣営の迷惑メール申告率がほぼゼロなのに対し、トランプ陣営のメールは、選挙戦の後半、かなり高い数字を記録しています。
トランプ陣営のメールは、スパムフィルターに引っかかる率も極端に高く、おそらく、この問題を回避するために、4つのドメインを使い分けているのではないかと、リターンパス社は見ています。
時間がない中で、たくさんの人にアプローチしたいと考えるトランプ陣営の戦略は、メール配信の担当者なら誰でも共感できます。でも、今の時代、この方法はリスクが高すぎるということも、この調査結果から良く分かります。
ヒラリー陣営は、"きちんとした送信者" として認められた一つのドメイン、info@hillaryclinton.com を使ってメールを運用し続け、結果的に、96%ものメールが登録者の受信ボックスに届いています。
リターンパス社によると、ヒラリー陣営は、配信リストに入っているさまざまな条件の人を、いろいろな条件でグループ分けするセグメント配信にもきちんと取り組んでいるようです。
メールの運用という面では、ヒラリー陣営が圧勝しているようですね。
【出典】
Email Marketing Claims Victory in 2016 Presidential Election: An Analysis of 2016 Candidate Campaigns
Email for President
How Clinton And Trump Compare On Email Marketing
キューノート エフシー
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