ブラックフライデーやサイバーマンデーも、SMSによる「テキストメッセージマーケティング」が今注目なワケ
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今や世界の共通言語となりつつある、11月の「ブラックフライデー」と12月の「サイバーマンデー」。新型コロナウイルスの影響下にあってもEC需要の高まりにより各ECサイトへのアクセスが殺到、売り上げの落ち込みは限定的であったとされています。背景には、企業によるオンラインチャネル、とりわけSMS(ショートメッセージ)の活用が盛んになったことで消費者との適切な距離感を構築できたことが大きいとも言われています。
様々なチャネルの中でなぜ、SMSが存在感を増しているのか?今回はこれら「オンライン商戦」のトレンドと併せて、「テキストメッセージマーケティング」と呼称されるSMSのマーケティング活用について取り上げます。
【目次】
1.「ブラックフライデー」「サイバーマンデー」とは
2.本場アメリカでは「過去最大のオンライン売上」
3.SMS活用がD2C領域で注目されているわけ
4.SMSを活用した顧客アプローチ
5.おわりに
「ブラックフライデー」「サイバーマンデー」とは
そもそもこの2つのセールについて、おさらいするところから始まります。
「ブラックフライデー」は、アメリカの感謝祭(サンクスギビング・デー)にあたる11月の第4木曜日の翌日を指します。
感謝祭の起源は、アメリカ北東部のニューイングランド地方に入植したプロテスタントが農作物の収穫を祝う習慣に由来すると言われています。正式に休日となったのは1863年、時の大統領エイブラハム・リンカーンが南北戦争により深まった国内の分断を修復し融和を図るべく「家族が集う機会に」との意図を込めて11月の第4木曜日を「感謝祭」とし、同日を連邦の休日としたことが始まりです。
家族が集う機会となれば、当然に親族間での贈り物が増えます。感謝祭当日に向けギフト商戦が盛り上がった一方で、感謝祭を過ぎればこうした贈答目的の商品は一斉に在庫処分にかけられるため、感謝祭の翌日にあたる11月の第4金曜日は各所でセールが開催され小売業界が大きく賑わうことが恒例となったことから「ブラックフライデー」として定着するようになりました。ちなみになぜ「ブラック」なのかというと、セール品を求める黒山の人だかりを見た警察が、仕事が増えることへの諦念も込めてそう呼称したことがきっかけと言われています。尤も今では、賑わいによって「小売店・サービス業が黒字になる」こととかけて好意的な意味合いで使われるようになりました。日本でも2016年ごろから大手小売が「ブラックフライデー」と銘打った販促キャンペーンを行うようになり、広がりを見せています。
一方で「サイバーマンデー」は、感謝祭とブラックフライデーを含む連休明けの月曜から始まるオンライン商戦を指します。ブラックフライデーが終わり集まっていた家族が各々自宅に帰ると今度はオンラインでの購買が増えるという図式ですが、その理由は定かではありません(「2000年代に入り職場にブロードバンドが普及したから」とも「連休中に街に買い物客が溢れるため」とも)。いずれにしても「事業者のEC対応」「高速インターネット回線サービスの普及」「PC・スマートフォンなどデバイス活用の浸透」といった様々な理由が後押ししていることは間違いないでしょう。日本でも2010年代に入りAmazonを皮切りにネットコマースの業界で取り上げられるようになり、EC全体の拡大と共に年々規模を拡大させています。
本場アメリカでは「過去最高のオンライン売上」
米Adobeの調査で、2020年のブラックフライデー期間中のオンライン売上が過去最大の90億ドル(約9,300億円)に達したことが明らかになりました。これは前年と比べても20%以上の増加で、新型コロナウイルスによる動態の変化も相まってECの需要がますます高まっていることを裏付ける数字となりました。
またある調査では、ブラックフライデー・サイバーマンデーを含むいわゆる「ホリデーシーズン」において「オンラインのみで買い物をする」と回答した消費者が約半数に上ったという調査結果が紹介されています。特に今年は混雑を避けるために各店でオンラインへの誘導が図られたこともあり、感染症対策としての一面もありました。
SMS活用がD2C領域で特に注目されているわけ
買い物の主軸がオンラインに移りつつあることは、小売店にとって消費者とのタッチポイントの変化を意味します。これまでも、メールや自社サイト(検索結果表示の最適化を含む)、SNS、アプリ等様々なチャネルや方法を活用した顧客育成の試みが図られてきましたが、ここにきて「SMS」がEC、特にD2C(Direct to Consumer)領域でにわかに注目を集めています。ある調査では、今回のブラックフライデー期間中のSMSの受信量が前年比で約1.5倍になったと報じており、とりわけD2C事業者においてSMSを有効に活用する例が多かったとされています。
D2Cとは、メーカー(製造元)が自社ECサイト等を通じ消費者(Consumer)に直接(Direct)販売する枠組みのことで、従来当たり前とされてきた「卸売り」や「セレクトショップ」等流通・販売を外部リソースに頼ってきた小売業において、革新的なビジネスモデルと言われています。日本では、大手メーカーが自社直営の販売店を持つSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)がすでに普及していますが、D2CはいわばこのSPAのビジネスモデルを「オンライン専業」にし、かつ「強みを持つ、絞り込まれた製品ラインナップ」により展開してゆく業態と言えるでしょう。店舗や倉庫といった先行投資を抑え流通・販売チャネルを効率化し、製品競争力を高めブランド価値を消費者に認知させることで売り上げに貢献する「コアなファン」を増やしていけることが、D2Cビジネスモデルの強みとされています。
D2C企業にとって特に重要なのが「自社のコンセプトやブランドイメージを確実に届け、認知させること」です。アメリカでは最近、多くのD2Cスタートアップ企業が自社の販促にSMSを利用した「テキストメッセージマーケティング」に取り組んでいるとされています。特にホリデーシーズンにおいては、大手小売り事業者などからのメールやアプリ通知等、広告の総量が増加する中で「埋もれない販促」の重要性はますます増しています。リッチコンテンツに十分なリソースを割いたり自社アプリによる囲い込みを行ったりできる大手と違い、スタートアップの多くはマーケティングの打ち手が限られる状況。そんな中で、シンプルながら強力なリーチ力を持つSMSの価値が見直され、利用が広がりつつある、というのが実情です。
SMSを活用した顧客アプローチ
実際に、どのようなメッセージがSMSを通じて送られているのでしょうか。
① 新製品リリースなど新着のお知らせ
(D2Cブランドの多くがそうであるように)プロダクトにこだわりを持つブランドであれば、自社の新製品の情報を待ち望むコアなファンにいち早くその情報を知らせたいというインセンティブが働きます。そのニーズに応えるのがシンプルで即時性に優れ、新たなアカウントの作成やログイン不要で誰もが簡単にメッセージを表示できるSMSによる訴求です。
② カート放棄(カゴ落ち)のリマインド
アメリカでは「Abandoned Cart」、商品が入ったままの買い物カートが「放棄されている」と表現されるカゴ落ちへのリマインドにもSMSが利用されています。
③ 入荷や発送の通知
注文商品の発送や、入荷待ちしていた商品の在庫が復活したタイミングなど、ユーザーが期待を込めて待っているアクションの通知にもSMSが効果的に利用されています。この場合、ユーザーにとって大事なのは「発送された」「入荷した」という事実であってコンテンツのリッチさなどはあまり問われないため、SMSでスピーディーに通知し見てもらえることが満足度の向上に繋がるという側面もあります。
④ リアルタイムの購買体験の提供
双方向のやり取りを活用した新たな購買体験の提供も広がっています。例えば、販促メッセージに対して顧客が「欲しい!」とレスポンスすると、カートに商品が入った状態のページのURLが返信で返ってくる、といった具合でリアルタイムな接客に活用される例も登場しています。あるいは、直近で買った商品に関連するおすすめアイテムのレコメンド等も有効な訴求例です。
一方で、注意すべき点として事業者側での共通認識は「やり過ぎない」ことと言われています。メールによるセールスレターと比較して、SMSは強めの通知で届くので見てもらえる確率が高い一方、その高いアテンションゆえ中身のない情報を高頻度で配信するとかえって離反を招いてしまいます。SMSが高い効果をもたらすのは、上記で取り上げた「顧客アクションに繋がる通知」や「確実に届けたいお知らせ」にその内容を限定して運用しているからとも言え、頻度と共にコンテンツにも気を配る必要があります。逆に、ブランドや製品のコンセプトを突き詰め、メッセージ性の高い訴求を得意とするD2Cブランドにとっては、SMSを使用する効果がより大きいと言えるでしょう。
おわりに
今回は、ブラックフライデーやサイバーマンデーといった「ホリデーシーズン」におけるデジタル活用、特にSMSによるマーケティングの拡がりについてご紹介しました。国内では本人認証や重要通知といったセキュアな用途で利用が急増しているSMSですが、アメリカでは1990年代から携帯電話が普及し個人間でのメッセージのやり取りに広くSMSが使われてきた経緯もあり、開封率の高さからマーケティングチャネルとしても高い価値を持っています。世界のモバイルコミュニケーションを長らく支えてきたSMSですが、まだまだ大いに活用される時代が続きそうです。
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